こんばんは。
終活弁護士の伊勢田です。
以前の日経新聞のコラムで、「予備的遺言」が取り上げられていました。
予備的遺言とは、その名のとおり「予備的に」する遺言です。
今日は、この予備的遺言についてお伝えしたいと思います。
予備的遺言とは、例えば以下のような遺言のことを言います。
「遺言者は、遺言者の死亡以前に○○が死亡したときは、××の財産をすべて△△に相続させる」
では、なぜこのような「予備的」な遺言が必要になるのでしょうか?
こんな例で考えてみましょう。
とある会社のオーナー企業社長のAさん(60歳) には、BとCという二人の息子さんがいます。Bさんは、Aさんの会社で取締役として働いている一方で、Cさんは、全く働かず、Aの自宅を度々訪れては、金を無心をするような人でした。
Aさんは、自分の死後はBさんに会社を引き継いでもらいたいと思っている一方で、Cさんには絶対に会社の株を渡したくないと思っています。
そこで、Aさんは、「遺言者は、遺言者の所有する○○株式会社の株式の全部を、Bに相続させる」という遺言を書きました。
しかし、Aが遺言を書いた後に、Bさんは不慮の事故で亡くなってしまいました。
では、この時Aさんの書いた遺言の効力はどうなるでしょう?
この遺言は、AさんがCさんに会社の株式を相続させたくない一心で書いたのだから、Cさんは相続できないのではないか・・・相続にお詳しい方なら、代襲相続でBさんの息子さんが相続するのでは?と思われる方もいらっしゃると思います。
しかし、最高裁判例(最判平成23年2月22日)においては、類似の事例において、このような遺言は、「代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り」、無効と判断されました。
つまり、簡単に言うと・・・もしも、上記の例でAさんが遺言を書きなおさなければ、Cさんに会社の株式が相続されてしまう可能性があるということです。
こんな時に使えるのが、「予備的遺言」です。
もしも、Aさんが遺言を書く際に、
「第1条 遺言者は、遺言者の所有する○○株式会社の株式の全部を、Bに相続させる。
第2条 遺言者は、遺言者の死亡以前にBが死亡したときは、前条会社の株式の全部を、Bの息子Dに相続させる」
という風に記載がなされていれば、仮にBさんがAさんよりも前に亡くなっていたとしても、Cさんに株式を渡さずに済みます。
ここでの第2条が、予備的遺言に該当します。
では、どういう事例で、予備的遺言が必要となるのでしょうか。
よくあるパターンとしては、上記例のように、「とある財産」を一定の人に渡したくない場合があげられます。
予備的遺言については、しっかりとした相続の知識に加え、様々な可能性を考慮した上で取り組まなければならず、とても難しいと言えます。
もしも、予備的遺言を書きたいという方は、是非専門家にご相談されるとよいでしょう。
もちろん、私もご相談を受け付けておりますので、ご連絡頂ければと思います。